トルコの「セラム」と花言葉の起源
花言葉の起源は、トルコの「セラム(selam)」という風習から来ていると言われています。セラムとは、花や果物に詩句をつけ、それを贈ることで相手に気持ちを伝える風習です。この風習をヨーロッパに紹介したのが、花言葉を作った人々の一人であるモンタギュー夫人です。
セラムとは、花や果物には詩句がついており、それらを贈ることで相手に気持ちを伝えるという風習のことを言います。
「セラム」とは?トルコ発祥の詩句を添えた風習
モンタギュー夫人は1718年にトルコのセラムについて友人に手紙を書き、これが花言葉普及のきっかけとなりました。彼女の手紙はコンスタンティノープル(現在のイスタンブール)から送られ、ヨーロッパで広まりました。
花言葉はセラムから来ているんだね!
そう、セラムでは花だけでなく、果物や金・銀の糸にも意味がありました。でも、ヨーロッパでは花だけが普及しました。セラムについて詳しく解説していきます。
当時のトルコ大使の妻であった、イギリスの貴族階級の女性メアリー・ウォトレイ・モンタギュー(1689~1762年)が、友人からトルコ流の恋文について尋ねられ、セラムについて書いた手紙を1718年にコンスタンティノープル(現在のトルコの都市イスタンブールの前身)から送ったことが、ヨーロッパにセラムが伝わるきっかけとなります。
のちにヨーロッパで流行した花言葉は世界中に知れ渡り、国ごとの歴史や風習にちなんだ独自の花言葉が作られるようになります。
ヨーロッパに広まったセラムと花言葉
セラム(selam)はアラビア語の「satam(あいさつ)」が語源となっていてます。モンタギュー夫人やオーブリ・ドゥ・ラ・モトレ共に、セラムについてほとんど同じ内容でヨーロッパに紹介しています。
「この国では、どんな色にも、花、草、果実、石、鳥の羽にも、それに関連した詩があって、あなたはそれを組み合せることによって、争うことも、非難することも、友情、愛情、儀礼の手紙を書くことも、さらにインクで指を汚すことなしに、ニュースをおくることもできる」 1996年 株式会社平凡社出版 春山行夫【花ことば−上 花の象徴とフォークロア】P19引用
このようにセラムについて紹介したものの、ヨーロッパの人々はセラムが花言葉そのものという印象をもったようです。ですが、 セラムとはその言葉と同じ韻をふむ他の言葉を表現する方法です。
年代 | フランス | イギリス | アメリカ | 日本 |
1718年にモンタギュー夫人がセラムについて書いた手紙を友人に送る。 | ||||
1801年頃〜 (19世紀初頭) | (仏)貴族サークル内で詩華集が流行る。 | |||
1819年 | (仏)シャルロット・ド・ラトゥールの「花ことば」が 出版。労働階級まで花言葉が浸透する。 | |||
1820年 | (英)フランスから花言葉が伝わる。印刷技術の発達と収入面での余裕、植物への関心なさから浸透せず。 | |||
1829年 | (米)エリザベス・ヴァートの「フローラの辞典」が出版。花言葉の普及に寄与。 | |||
1834年 | (英)フレデリック・ショーベル著の「花ことば」が出版。花言葉に人気が出始める。 | |||
1870年頃〜 (19世紀後半) | (仏)花言葉のブームが衰退し始める。 | (日)明治初期に花言葉が伝わる。 | ||
1884年 | (英)絵本画家ケイト・グリーナウェイが挿絵入りの「花ことば」を出版。花言葉の普及に大きく寄与。 | |||
1886年 | (日)上田金城氏が訳述した「新式泰西礼法」で花言葉が初めて紹介される。 | |||
1909年 | (日)田寺寛二の「花ことば」が出版。 | |||
1910年 | (日)与謝野晶子の「花」が出版。 |
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フランスでのセラムと花言葉の普及
19世紀初頭のフランスでは、草花を擬人化した詞華集が貴族サークル内で流行り始めます。草花の性質から恋人の美しさを賞賛したり、不実や裏切りなどを非難するといった恋愛に絡んだ内容で、恋の駆け引きに花が使われていたそうです。
貴族内の詞華集ブームをきっかけに、次第に上流階級の人向けに花言葉の本が出版され始めます。1819年には現代の花言葉の成立に大きく貢献したとされるシャルロット・ド・ラトゥールの「花ことば(Le Langage des Fleurs)」が出版され、フランス本国で十八版を重ねるほど人気を博しました。
ラトゥールの著作以後は「花ことば」の海賊版が現れたり、花言葉に関する本の出版が続くなど、中流階級から労働者階級まで花言葉が幅広く浸透していきました。
そして、19世紀後半になると、フランスで花言葉に関する著作はほとんど見られなくなり、花言葉のブームが衰退していきます。 花言葉はフランスで流行り始めましたが、衰退するのもこの地からだったようです。
シャルロット・ド・ラトゥール「花ことば」 の写真はこちら↓
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イギリスでのセラムの紹介と花言葉の進展
近代的な花言葉は、1820年代にフランスからイギリスへ伝わったとされています。ですが、イギリスで花言葉関連の本が一般の人に普及するには、印刷技術の発達と収入面での余裕、植物への関心が必要でした。当時のイギリスではその余裕がなく花言葉はすぐに浸透しませんでした。
イギリスで最初に人気を得た花言葉の本は、1834年に出版されたフレデリック・ショーベル著の「花ことば」です。この本はラトゥールの花ことばを翻訳した上で、イギリスの実状にあった、一般の人にうけるような内容に変更されています。
その後、次々と花言葉に関する本が出版され、イギリスで花言葉が普及していきました。
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アメリカで花言葉が広まった経緯
アメリカで最初に花言葉を普及させたのは、1829年出版のエリザベス・ヴァートの「フローラの辞典」だと言われています。
著者は匿名で「A Lady」とされ、作者はラトゥールの花言葉を読んでいたそうですが、アメリカの植物に合わせていて、内容は大きく変わっています。
その後、続々と花言葉に関する本が出版され、アメリカでも花言葉が普及していきました。
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日本における花言葉とセラムの影響
「新式泰西礼法(シンシキタイセイレイホウ)」はフランスのルーイスダルク女史の著書を、上田金城氏が訳述したものです。新式泰西礼法では、数十種類の花のもつ意味を解説していますが、花言葉に関する内容は第二十章の「花の礼」のみで、その他の内容も含まれています。
花言葉が1冊の本となったのは、1909年の田寺寛二著「花ことば」や、1910年に出版された与謝野晶子(1878~1942年)の「花」が最初になります。
与謝野晶子の花では、詩人の江南文三(1877~1946年)が花言葉について解説し、そこに与謝野晶子の花をテーマにした短歌五十首が収められています。
当時は、輸入された花言葉をそのまま使っていましたが、徐々に日本の風習や神話に合わせた花言葉に変わっていき、現在の花言葉ができました。
新たな花言葉の誕生とセラムの影響
バラの新品種「24」の公式HPはこちら↓
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花束の起源とは?
花束は花言葉と同じでヨーロッパから始まります。1300年〜1600年頃にヨーロッパでアレンジメントが広まりました。
今ではプレゼントの定番になっている花束ですが、日本で普及し始めたのは欧米文化が流行り始めた戦後からになります。
かなり最近の話だね。それまでは花束がなかったってこと?
ヨーロッパで花は「贈るもの」だけど、日本では「自分でいけるもの(嗜み)」だったから、花を束ねて人に贈る習慣がなかったんだ。
以前の日本では花を贈る場合はあくまで「自分でいけること」が前提なので、茎の長い状態で花を束ねて渡していました。
デザインされたアレンジメントとういより、花そのものを渡す感じなんだね!
そうだね♪ヨーロッパと日本では花の文化が全く違うことが、花束に影響しているね。